第12回 長野県眼科フォーラム 特別講演

「緑内障の手術戦略」

信州大学 眼科 助教  宮原 照良

 緑内障に関するいくつかのRCT(Randomized Controlled Trial)が発表され、緑内障のもっとも確実な治療法は眼圧下降をはかることとなっています。
 基本は薬物療法であり、近年PG関連薬、CAIなどが登場し、劇的に眼圧を下げることが可能になり、また、手術しなければならない症例は減少していると考えます。 しかしながら、やはり手術せざるをえない症例も依然として多く、最も効果的な手術法としては、MMC併用トラベクレクトミーがありますが、過剰濾過や濾過胞感染などによる視機能障害が起こった際は、自然経過に任せた場合よりも、かえって目の寿命を短くする可能性があります。
 そこで当院では、合併症が少ないトラベクロトミー+αを、将来必要になるかもしれないトラベクレクトミーに最小限の悪影響しか与えないよう下方に積極的に行っています。眼圧下降薬を併用することで、視機能をさほど下げることなく、そこそこの眼圧下降を得ており、病型によってはトラベクレクトミーに迫る効果を得ることもあります。
 FAP(家族性アミロイドポリニューロパチー)は長野県と熊本県に集積地があり、肝移植によって生命予後が飛躍的に伸びていますが、眼合併症として、硝子体混濁と特に緑内障が問題です。硝子体混濁に対して、従来の20G硝子体手術の場合、結膜切開が大きくなりトラベクレクトミーに悪影響を与えます。そこで当院では、25G硝子体手術+αの工夫をすることで、緑内障治療への悪影響を最小限にするようにしています。
 今回は、以上のテーマを中心にお話ししたいと思います。