第16回 長野県眼科フォーラム 特別講演

東日本大震災における日本眼科医会本部・支部の対応 〜次なる大災害への備え〜

日本眼科医会常任理事    小沢 忠彦

 2011年3月11日、東日本に大地震が発生しました。この震災は、地震そのものの被害だけでなく、想定をはるかに上回る大津波、そしていつ終息するのかわからない状況の福島の原発事故を引き起こし、その影響が今もなお日本中に広まっています。今回は、震災後から現在までの日本眼科医会本部の活動をお話しさせていただきますが、私は茨城県眼科医会の支部長として被災地医療に対応してまいりましたので、その経験も交え、ご報告させていただきます。
 日本眼科医会では、3月14日に日本眼科学会と共に災害対策本部を立ち上げました。災害本部会議には、日本眼科医療機器協会、眼科用材協会、日本CL協会、日本眼内レンズ協会をはじめとした多くの関連団体にもご参加いただき、まさに眼科関連団体が一丸となって被災地支援のため最大限の活動を行いました。被災地においても、各県の眼科医会と大学眼科学教室が連携し、その地区に応じた対応を迅速に行い、活動の成果は顕著に現れました。
 しかし、いくつかの問題点が明らかになりました。例えば災害支援継続の是非です。一般的には、災害直後の支援が継続されないことが問題視されます。ところが、災害支援を目指した医療支援が、地元医療機関の復旧活動と拮抗することもあり、長期にわたる医療支援に注意を払う必要があることがわかりました。また被災地での診療は、臨時の診察室で、診療録や十分な検査器具が無い状況において、持参薬だけを頼りに診察を行わなくてはならないという医師のストレスは、計り知れません。我々医師は、災害時の対応が迅速にとれるよう、日常から対策を立てていく必要性を感じました。
 未曾有の大震災によって、私たちは甚大な被害を受けました。しかしながら、多くを学びました。逆境の中を耐え抜いて行くための知恵を自然界から教えられたと思っています。非常事態をどう対処するのかは、平時からの心がけだと痛感しております。 “次なる災害に対して今、我々が出来ることは何か”を第一に考え、“備え”の大切さから、当院において備蓄品の確保に力を入れております。今回は参考までに備蓄品をご提案したいと存じます。
 この度の大震災で得られた多くの情報や経験を日本中の人々で共有することが、今後起こりうる災害に立ち向かうための術になると考えます。今回は、東日本大震災後に日本眼科医会や被災地各支部で行ってきた救援活動の実際を通して、そこから「被災地の眼科医であればどのような行動をとるべきか」「支援に回る眼科医であれば何をなすべきか」「平時の眼科診療において何をなすべきか」等につき、考えるきっかけになれば幸いです。