私が眼科医になった頃は、加齢黄斑変性は老人性(円板状)黄斑変性症と呼ばれ、それほど注目されず、診断しても治療不可能な黄斑疾患と考えられていた。その後、人口の高齢化に伴って増加し、また治療面においても、レーザー凝固の有効性、黄斑下手術の導入などによって、20世紀末には注目される疾患となり、一般眼科医にとってもこの疾患を見過ごすことはできない状況になってきた。特に、2004年5月にわが国でも光線力学的療法(PDT)が開始され、加齢黄斑変性(AMD)に対する治療が様変わりし、治療可能な疾患となった。すなわち、誤診などによって手遅れの状態にしてしまうことは決して許されない状況になった。更に、2つの新しい抗血管内皮増殖因子(VEGF)薬がわが国でもやっと承認された。本セミナーでは、ケース・スタディの形をとりながら、脈絡膜新生血管が発生する前の段階のnon-exudative AMDに対する予防的治療も含めてAMDに対する治療戦略を紹介する。