第236回長野県眼科医会集談会 特別講演 ll

「小児のアレルギー性結膜疾患と患者参画型診療」

日本大学医学部視覚科学系眼科学分野   庄司  純

 花粉結膜炎や春季カタルに代表されるアレルギー性結膜疾患では、患者の低年齢化が問題視されている。小児に対するアレルギー診療では、患者と保護者および医師の3者で治療を進めていくことが重要である。近年、アトピー性皮膚炎や気管支喘息などのアレルギー疾患では、治療効果の向上を目指して患者参画型診療を導入する試みが行われている。  
 患者参画型診療は、患者、患者家族および医師の間で、診断、病状(重症度)および治療に関与する医療情報を共有しながら治療をすすめていく診療スタイルである。特に小児の場合、保護者の過剰反応や無関心などにより的確な病状把握と治療コンプライアンスの確保が困難な場合がある。従って、患者とその家族に対して、正確な病状(重症度)説明や治療目標設定などを行うことにより治療効果を向上させることが重要である。アレルギー性結膜疾患の日常診療に患者参画型診療を導入するためには、アレルギー手帳などのコミュニケーションツール、診断や重症度判定を行うための眼科アレルギー検査の充実、臨床症状の変化を把握するための臨床スコア(重症度観察スケール)などが必要であると考えられる。  
 一方、アレルギー性結膜疾患の治療に用いる点眼薬には、メディエーター遊離抑制薬、ヒスタミンH1受容体拮抗薬、副腎皮質ステロイド薬(ステロイド薬)および免疫抑制薬があり、以前の抗アレルギー薬およびステロイド薬を中心とした点眼治療から、アレルギー性結膜疾患の病型や重症度に合わせた薬剤選択が要求される治療へと変化していると考えられる。また、治療薬の選択理由や効果判定の結果に関しては、充分なインフォームドコンセントが必要であると考えられる。  
 今回の講演では、患者参画型診療への取り組みとして、小児の花粉結膜炎および春季カタル症例に対して、我々が行っている重症度観察スケール、涙液検査などの眼アレルギー検査の開発経過を中心に、眼アレルギー検査を用いた治療薬の選択、治療効果判定などの実際について解説し、患者参画型診療の将来を展望する。