白内障/IOL手術は、術式、IOL付加機能、視機能の評価法などの進歩により、完成度の高い手術として高齢化社会で大きな貢献を行っている。
問題の残る術後管理の中、中心にあるのは術後炎症である。術後炎症は、細菌性と非細菌性に分かれる。ここでは非細菌性のうちでも近年米国で流行しているといわれるtoxic anterior segment syndrome(これは幸いにして我国では報告がない)以外のいわば生理学的術後炎症の管理について解説する。
生理学的術後炎症に関係する症候としては、血液房水柵破壊、嚢胞様黄斑浮腫(CME)さらに後発白内障などが含まれる。これらの症候に関してはprostaglandins(PGs)などのサイトカインの関与が指摘され、その成因論に関して我国において多くの研究が行われた。近年は上述のごとく手術術式等の進歩がなされ、むしろこの生理学的炎症の予防とくにCMEの予防はより早期の社会復帰が要求される現在、改めて意義のある問題として再浮上している。
非ステロイド(NSAIDs)点眼によるCMEの予防は、Miyakeにより1977年に最初の報告がされて以来、50篇以上のpeer review journalの論文がみられ、近年のmeta-analysisはNSAIDs点眼がステロイド点眼より有効であることを確認している。しかし当時にNSAIDs点眼の薬物動態、安全性、薬剤構造などの改善も指摘され、早期の視力改善に影響があるかについても確認がされていない。
最近開発されたNepafenacは、これらの問題の改善を試みた新しいNSAIDs点眼である。我々は今回、本剤とステロイド点眼を比較し、CME、房水柵破壊、OCTによる黄斑部厚、視力回復速度などにおいて、すぐれていることを確認した。
術後に使用される対緑内障薬点眼により術後早期偽水晶体眼でCMEが多発することが報告された。この成因として我々は主剤より付加された防腐剤が主に関与する「防腐剤黄斑症」という概念を提唱した。最近、毒性を軽減した新しい防腐剤を使用したTravoprostが他のPGs関連薬よりも房水柵、CMEの発生頻度が少ないことを確認したので、これについても報告する。