第249回長野県眼科医会集談会 特別講演

緑内障治療における眼圧下降と薬物治療

新潟大学大学院医歯学総合研究科視覚病態学分野(眼科) 福地 健郎

 広義・原発開放隅角緑内障(POAG)眼における視神経障害のメカニズムには様々な側面があるようだが、とにかく現時点で私たちが持っているエビデンスのある治療法は眼圧下降治療であり、まずこれを優先して考えなければ行けない.私たちはPOAGの症例を高眼圧型(HTG)と正常眼圧型(NTG)に分けて、経過眼圧値と視野障害進行速度との関連について検討した。その結果、HTGでは眼圧値と進行速度には弱いながらも有意な相関があり、眼圧値が高いほど進行が速かった。一方、NTGでは両者には有意な相関は認められなかった。しかし、NTGでも進行の速い症例群では遅い症例群に比べ眼圧変動が大きかった。つまりPOAG症例に対して私たちは眼圧値とともに変動に対する注意をする必要がある。 ところで、POAGにおいては点眼薬による薬物治療の継続が治療の基本である。これには薬剤の効果もさることながら、患者自身による高い治療の精度が必要である。いわゆるアドヒアランスを高く保つことが緑内障治療の目的であるより安全により確実に生涯にわたる視機能予後を確保することに繋がる。すでに日本で配合点眼薬が使用され3年が経過した。POAGに対する基本的な治療方法が変わった訳ではないが、より少ない薬剤で、より積極的な眼圧下降治療を目指すという意味で、すでに定着している。また、やむを得ず薬剤数を増やすにしても、これまでと同じ点眼回数でより多くの(メカニズムの)薬剤を使用することが可能である。配合点眼薬はより安全でより確実な眼圧下降治療にとってきわめて有力なツールである。