第251回長野県眼科医会集談会 特別講演

緑内障診療アップデート

東北大学大学院医学系研究科 神経感覚器病態学講座 眼科学分野 教授  中澤 徹

  緑内障診療において「最も確実な治療法は眼圧下降」である。しかし、近年緑内障による失明患者数が、糖尿病網膜症を抜いて第一位になってしまった。このことは失明予防の観点から考えると、現状の緑内障治療または診療が不十分であることを示唆している。更に今後高齢者人口の増加に伴い緑内障患者数が上昇することが予測され、今まで以上に緑内障の正確な診療と新規治療法の開発が重要であると考えられる。緑内障は自覚症状が弱いため病院初診時、既に視野が進行している症例や手術紹介のタイミングが遅くなった症例、手術により持続的な眼圧下降が得られない症例、十分眼圧が低いにも関わらず視野が進行する症例などが失明に最も近い症例群と考えられる。未受診者を病院に来院させること、紹介元病院との強力な病診連携、基礎研究によりブレブの瘢痕化を制御すること、神経保護治療を開発することなどが今後の課題である。
  現在我々にできることは、眼圧のみにとらわれず視野の進行をしっかりと見極めること、更には他覚的な指標を用いて緑内障の経過観察手段を充実させることが重要である。眼底写真、静的視野計、光干渉断層計、HRT、レーザースペックルフローグラフィーなどがその経過観察の目的に合致する機械である。そこで本講演では、緑内障診断検査機械の有用性に関する最近の知見をまとめ紹介する。特に眼血流、近視、視野検査、乳頭形状などのキーワードを中心に解説する。