第252回長野県眼科医会集談会 特別講演
臨床と研究の橋渡し トランスレーショナルリサーチ
国立病院機構 九州医療センター 久冨 智朗
近年の眼科領域の進歩にはめざましいものがあります。光干渉断層計(OCT)や走査レーザー検眼鏡(SLO)などの診断機器の発達や、極小切開白内障手術や硝子体手術の導入、抗VEGF薬に代表される分子標的薬剤の臨床応用などは実地診療に大きな衝撃を与え、臨床医の日々の診断治療に貢献し、患者さんに還元されています。これらの進歩は臨床と研究から得られた知見を有機的に結びつけた結果であり、基礎研究と臨床研究から臨床への橋渡し研究、トランスレーショナルリサーチとして注目されています。
私は九州大学医学研究院に開設された臨床大学院に学び、基礎研究、臨床研究から実地臨床に還元出来る成果を求めて研究してきました。今回はその研究内容と成果、臨床応用、将来の展望などトランスレーショナルリサーチの実際を御紹介します。また若い先生方へは、私の臨床医としての原動力となっている研究生活やボストンでの留学時代の体験談もお話したいと思います。
1) なぜ網膜剥離では急いで手術しないといけないのか? 網膜細胞の減少と抑制方法
2) 大学院基礎研究と米国研究留学
3) 安全で確実な硝子体手術 眼内染色剤の開発と臨床応用への道のり
4) 細胞保護から考える眼科臨床 将来への展望