第260回長野県眼科医会集談会 特別講演

角膜潰瘍の診断と治療について

鳥取大学医学部視覚病態学  教授  井上 幸次

 角膜潰瘍とひとことで言っても、その中にはさまざまな原因のものが含まれてくる。特に実際の診療においては感染性であるか非感染性であるかを的確に判断することが重要である。非感染性のものについては、全身も含めて角膜以外の部位にも注意を払い、その病態を十分に把握することが重要であり、感染性のものについては、更に塗抹検鏡、培養、免疫クロマトグラフィ、PCRなどを駆使して、その原因微生物を特定することが重要である。
 本講演の前半は角膜潰瘍をきたす個々の疾患について、非感染性のものについては、栄養障害性角膜潰瘍、シールド潰瘍、Mooren潰瘍などを中心に、感染性のものについては真菌、ヘルペス、アカントアメーバなどを中心に、診断と治療のトレンドについてまとめてみたい。しかし、実際の診療では、いろいろな病態が混在することも多く、診断も治療も複雑となる。中には原因が特定されても治療が困難な例があり、感染微生物やホストの様々な要因を考えながら、治療方針を変えていく必要がある。後半は一筋縄ではゆかないこのような症例を提示して、角膜潰瘍の診断と治療について、聴衆の先生方と一緒に考えてみたい。