第297回 長野県眼科医会集談会・第57回信州臨床眼科研究会・第28回甲信セミナー 一般講演抄録

ベーチェット病に合併した毛様体腫瘍の一例

山梨大学医学部眼科学教室
渡辺宏紀、保坂勇樹、福山崇哲、葛西友香、須田美嘉、米山征吾

69歳男性。左眼遷延性黄斑浮腫、皮疹、関節炎などでベーチェット病と診断された。黄斑浮腫に対して、ステロイド治療や抗血管内皮増殖因子(VEGF)薬硝子体注射を施行するも、改善と悪化を繰り返した。網膜前膜による黄斑牽引も伴っていたため、硝子体手術を施行したところ、毛様体部に橙赤色腫瘤を偶発的に認めた。画像検査では悪性よりも良性腫瘍が疑われたが、腫瘍由来のVEGF分泌が黄斑浮腫の一因であった可能性も示唆された。術後は網膜前膜除去により黄斑浮腫の改善を認めたが、今後再燃した場合は抗VEGF薬硝子体注射も検討される。本症例では黄斑浮腫の要因として、ベーチェット病による炎症、毛様体腫瘍によるVEGF分泌、網膜前膜による牽引が複合的に関与していた可能性がある。黄斑浮腫の鑑別診断において、毛様体腫瘍の存在も念頭に置く必要性を示唆する興味深い一例である。