再考 落屑緑内障

網膜ジストロフィの遺伝学的検査と環境要因

熊本大学大学院生命科学研究部眼科学講座 井上 俊洋

落屑緑内障は毛様小帯、水晶体嚢、瞳孔縁などに白色沈着物として観察される落屑物質を有する疾患である。落屑物質は加齢とともに顕在化し、遺伝的背景や疫学的地域性が関連する。しかしながら、左右差が大きい症例や加齢の関与など、その病態に不明な点も残る。約20%には緑内障を伴うが、その臨床的特徴として、原発開放隅角緑内障に比べると眼圧変動が大きく、治療前眼圧が高く、視神経が脆弱であることが挙げられる。このため、治療開始時の視野は進行している症例が多く、治療に難渋することも珍しくない。また、毛様小帯が脆弱であることに由来する特有の臨床経過にもしばしば遭遇する。我々の施設の緑内障手術において最多の病型は落屑緑内障であり、その中で経験した印象的な症例と、基礎研究を含めたわれわれの取り組みを紹介しながら、本疾患の診断、治療について考えてみたい。