第298回 長野県眼科医会集談会 特別講演抄録
網膜ジストロフィの遺伝学的検査と環境要因
長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 眼科・視覚科学分野 教授 大石 明生 先生
網膜ジストロフィは遺伝子の異常により網膜、特に視細胞の障害を来たす疾患の総称である。一方、目の前の患者さんが実際にどの遺伝子の異常で疾患を発症しているのかを決定するのは容易ではなかった。これは網膜ジストロフィの原因遺伝子が網膜色素変性に限っても90以上と非常に多く、すべてを調べることが困難だったことが大きな要因である。この状況が変わったのは2010年頃からで、次世代シーケンサーを用いることで、広い範囲の遺伝子配列を一気に解読できるようになった。現在では保険収載された検査と、RPE65遺伝子異常に対する遺伝子治療が日本でも始まっており、臨床的にも重要なものとなっている。一方で原因遺伝子が分かってもそれだけで説明できない個人差があることも事実である。
本講演では個人差を説明する要因として、喫煙や光障害など環境因子の影響についても考える。