第38回 長野県眼科フォーラム 特別講演

単焦点眼内レンズと低加入度数分節眼内レンズの使い分け

善行すずき眼科  鈴木久晴

 単焦点レンズとして登場した眼内レンズ(IOL)は、その後の技術の進歩によってトーリック、多焦点と高機能IOLとして進化が続く中、白内障手術は「より低侵襲で安全な手術」と「よりよく視える手術」の両立が求められている。現在、単焦点IOLは公的保険の中で用い、多焦点IOLは先進医療の中で用いられているのが現状である。多焦点IOLを用いる場合には患者が民間の医療保険において先進医療特約を契約している場合には、患者の自己負担額も軽減されるが、そうでない場合は患者の自己負担額が高額になってしまうことは否めない。
 そのような環境の中、公的保険の中で用いることができる低加入度数分節IOLという新しいカテゴリーのIOLが新登場し、その特徴的な光学設計により患者のより快適な見え方への期待に応えようとしている。
  一方、デザイン上の特徴として、この製品はプレート型という日本では馴染みの少ない形状をしているため、このデザインがもつ特性や挿入時のコツを知っておくことは、低侵襲で安全な手術を行う上でも非常に重要である。 本講演では低加入度数分節眼内レンズのプレート型デザインの詳しい形状や安定性などの基本性能と、挿入時の開放挙動や嚢内への挿入のコツについて、実際の臨床映像を供覧しつつ、単焦点レンズとの比較を行う。また、このIOLをどのような患者に適応していくかも私見ではあるが提示してみたいと思う。