第56回 長野県眼科フォーラム 特別講演抄録

近視進行予防の現在

京都府立医科大学眼科 講師 稗田 牧

「遠くを見ようとしない意識」が近視を引き起こすのかもしれません。成長に伴い視覚の解像度が向上することで、膨大な情報が入力され、言葉を聞き分けたり、文字を理解したりする過程で、外界とのつながりが徐々に薄れ、最終的には「外界を拒絶」する反応が生じ、空間認識が縮小されるのかもしれません。近視によって視覚の「見る」範囲を縮小することで、遠くの物質や背景を排除することは、近方視での集中力の向上につながるのかもしれません。近視の多くが義務教育の期間に発生するということは、知性の発達と近視に密接な関係があることを示唆しています。 近視の進行を予防するための治療法には、現在、エビデンスに基づいた複数の方法が登場しており、日本でも承認されたものがあります。この状況により、眼科医が近視進行抑制に真剣に取り組む義務が生じることが考えられます。たとえ自由診療であっても、医学的に効果があると認められる治療法がある場合には、その情報を患者に提供し、適切な選択肢を示す責任があるからです。この講演では、来るべき「近視進行抑制時代」に、眼科医がどのような役割を果たすべきかを考察します。